消化器内科
消化器内科
消化器内科は、食道・胃・十二指腸・小腸・大腸などの消化管および、肝臓や胆のう、膵臓などを幅広く専門的に診る科です。
胃腸炎や便秘症などの日常でよくみられる病気から胃がんや大腸がん、肝臓がんなど命に関わる悪性腫瘍まで様々な疾患が対象となります。
問診や症状に応じた診察を行い、必要に応じて血液検査、レントゲン検査、腹部エコー検査、胃・大腸内視鏡検査を行って病気を診断します。さらにCT検査やMRI検査を行って精密検査を行うこともります。
このような症状がある方はご相談ください。
胃の粘膜に発生する悪性腫瘍です。主な原因はピロリ菌感染による長期間の炎症です。死亡数は肺がん、大腸がんに続いて多く、年間4万人以上の方が亡くなられています(2021年)。初期の段階では症状が現れにくく、進行した状態では胃痛、腹部不快感、消化不良、食欲不振、吐血、貧血などの症状が現れることがあります。診断は内視鏡検査や画像検査(CTスキャン、MRIなど)を通じて行われ、組織の生検を行うことで確定診断が行われます。治療方法はがんの進行度や全身状態によって異なります。一般的な治療法としては、胃内視鏡での切除(剥離術)、外科手術、放射線療法、化学療法、免疫療法などがあります。
食道の粘膜から発生する悪性腫瘍で、食道内にいくつも同時にできることもあります。食道がんの主な原因は、喫煙、過度のアルコール摂取、食道の炎症などが挙げられます。また長期間にわたる食道への胃酸の逆流(逆流性食道炎やバレット食道)も食道がんのリスクを増加させる要因とされています。
食道がんの症状は、進行度によって異なりますが、嚥下困難、食事のつかえ感、胸痛、体重減少、声のかすれ、咳、吐血などが現れることがあります。
診断は内視鏡検査やバリウム検査、組織の生検を通じて行われますが、バリウム検査で早期に発見をすることは難しいとされます。治療法はがんの進行度、部位、全身状態によって異なりますが、胃内視鏡による切除(剥離術)、外科手術、放射線療法、化学療法、免疫療法などがあります。
早期発見の重要性:
胃がんや食道がんは早期発見が非常に重要です。症状が出てから診断されると、進行してしまっていることがあります。早期発見なら外科手術を必要とせず、胃内視鏡(胃カメラ)治療で十分に対処できる可能性が高いです。内視鏡技術は進歩しており、身体への負担が少ない検査や治療もできるようになりました。定期的な内視鏡検査を積極的に受けるようにしましょう。
強い酸性の胃液が胃の内容物とともに食道に逆流し、食道の粘膜が炎症を起こす病気です。胸やけや呑酸(胃酸が口まで上がってきて酸っぱいと感じるようになる)が2大症状です。その他には胸痛や慢性的な咳の原因となることもあります。何年も放置すると稀に食道腺がんが発生することもあります。
加齢による筋力の低下、早食いや食べ過ぎなどの生活習慣、肥満や妊娠で腹圧が高くなることなどが、胃酸が逆流しやすくなる原因となります。
様々な原因で胃の粘膜に炎症が生じた病気です。急激に腹痛や胃の不快感、吐き気などの症状が生じます。胃の広範囲にびらんが生じてしまった状態を「急性胃粘膜病変」と呼び、過度の飲酒や刺激の強い食べ物の摂取、ストレス、アレルギー、薬剤(痛み止めの薬、ステロイド、抗菌薬など)が原因と考えられています。内視鏡検査が普及している現在では炎症の状態を詳しく観察できるようになっています。
胃や十二指腸に深い傷ができた状態を潰瘍といいます。幼少期に感染したピロリ菌が主な原因として知られていますが、薬剤やストレスなどでも発症します。症状としてはみぞおちや背中の痛み、腰の痛み、吐き気、胸やけなどが生じます。潰瘍ができる場所によってはそこから出血して、血を吐いたり、真っ黒な便が出たりすることがあります。また、胃や十二指腸の壁に穴があいて(穿孔)、食物などが外に漏れ出して腹膜炎をおこして手術が必要になることもあります。
胃がんなどの悪性の病気も、一部に潰瘍ができることがあります。内視鏡検査で潰瘍をみつけた場合、良悪性を調べるために、潰瘍の周囲から組織の一部を採取して病理検査で詳しく調べることがあります(生検)。
主に長期間のピロリ菌感染によって引き起こされる状態で、胃液や胃酸などを分泌する組織が退縮していく変化をいいます。萎縮の範囲が広がると、胃がんのリスクとなります。ピロリ菌を除菌することで萎縮の進行を止め、胃がんのリスクを下げることが期待できますが、除菌した後も胃がんができることは多く、定期的な胃内視鏡検査が必要となります。
大腸(結腸、直腸、肛門)に発生するがんです。
大腸がんは増加傾向にあり、がんによる死亡数では男性が2位、女性で1位です。年間5万以上の方が亡くなられています(2021年)。原因としては運動不足、野菜や果物の摂取不足、肥満、飲酒などが挙げられています。また家族に大腸がんの方がいる方はリスクが増加します。進行すると血便や便秘、下痢、腹痛、体重減少、食欲不振、貧血症状などを来します。治療方法は内視鏡(大腸カメラ)切除、外科手術、化学療法、放射線照射などがあります。
症状が出たときには進行してしまっていることが多いため、自覚症状のないうちから便の検査や内視鏡検査を行い、早期発見・早期治療を目指すことが大切です。また大腸がんの多くは良性のポリープから発生することが知られているため、内視鏡検査の際にみつかった大腸ポリープは積極的に切除することによってがんの予防につながります。
便秘症は、大腸や直腸の働きの異常による「機能性便秘」、便の通過が物理的に妨げられる「器質性便秘」、全身の病気の症状として起こる「症候性便秘」、薬の副作用で起こる「薬剤性便秘」に分けられます。便秘症の原因は幅広く、原因が異なれば治療法も違います。中には危険な便秘もあるので注意が必要です。強い腹痛や吐き気、発熱などを伴う場合や便に血が混ざる場合は自己療法で対処せずに、すぐに受診してください。
ウイルス、細菌、寄生虫などの腸管感染により発症します。梅雨の影響などで高温多湿となる夏場は細菌が原因となるものが多く、冬場にはノロウイルスをはじめとするウイルス性のものが多くみられます。細菌性はサルモネラ、腸炎ビブリオ、カンピロバクター、腸管出血性大腸菌(O‐157)などがあります。ウイルス性はノロウイルス、ロタウイルス、エンテロウイルス、アデノウイルスなどがあります。下痢や腹痛が主な症状ですが、下血・血便や発熱、悪心・嘔吐、食欲不振などを伴うこともあります。
腹の痛みや体の不調に伴って下痢や便秘などが数か月以上続き、検査をしても異常が見られない場合に最も疑われるのが過敏性腸症候群です。明確な原因は不明ですが、ストレスなど心理的要因が関連していると考えられています。腸内細菌、食物アレルギー、感染性腸炎も原因として挙げられています。
潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜を中心にびらんや潰瘍を形成します。症状としては下痢や血便、腹痛、しぶり腹(便意があっても便が出ない、出ても少量)、重症化すると発熱、体重減少、貧血などがみられることもあります。原因不明で難病に指定されておりますが、近年病勢を抑える多くの薬剤が開発され、使用できるようになっております。適切な治療により、健康な人とほとんど変わらない日常生活を送ることができます。
全身のあらゆる消化管に、浮腫や潰瘍を形成し症状を引き起こす病気です。遺伝的要素も考えられていますが、明確な原因は不明です。潰瘍性大腸炎と同様に難病に指定されています。慢性的な腹痛や下痢が高頻度であり、発熱、栄養障害、血便、肛門病変(痔ろうなど)をきっかけに診断されることもあります。栄養療法や薬物療法などの内科的治療が中心となりますが、悪化して腸閉塞や穿孔(腸に穴があくこと)等の合併症を来した場合には外科手術が必要となります。近年病勢を抑える多くの薬剤も開発されており、合併症を来さないように定期的な診察や内科的治療を続ける必要があります。
様々な原因によって肝細胞に炎症が起こり、肝細胞が壊されてしまう病態をいいます。肝機能障害が起きると肝細胞に含まれるALTやASTという酵素が血液中に漏れ出るため、血液検査の項目で異常として発見されます。原因には、ウイルス性肝炎(B型、C型肝炎が大半)、アルコール性肝障害、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、薬物性肝障害、自己免疫性肝炎があります。数値に異常があった場合は、生活習慣の改善に取り組み肝機能を高め、悪化を防ぐことが重要です。
肝硬変は慢性肝疾患(B型肝炎やC型肝炎の肝炎ウイルス、脂肪肝、アルコール性肝障害など)において肝臓に線維組織が増加し、肝臓が硬くなる病気です。身体症状がない代償期と症状が現れる非代償期があり、非代償期では黄疸や腹水・浮腫、食道静脈瘤の破裂(吐血)、肝性脳症といった合併症が現れてきます。
一般に胆のうの中に結石ができる胆のう結石を胆石と呼んでいます。症状としては、みぞおちを中心とした激しい痛みが典型的で、右肩や背中の痛みを伴う場合もあります。検診などで見つかることも多く、無症状の場合には経過を観察することもあります。
膵液に含まれる消化酵素により、自らの膵臓を消化してしまう病態が急性膵炎です。原因として多いのは過度なアルコール摂取と胆石です。胆石が膵管の出口を塞ぐことにより膵臓に炎症が起こります。上腹部や背中の激しい痛みや嘔吐がみられ、黄疸や発熱を伴うこともあります。炎症が他臓器に広がりやすく、早期に入院治療が必要です。
膵臓がんは特徴的な症状がなく、早期発見が難しいがんの一つです。初発症状は腹部違和感や食欲不振、体重減少といった他の疾患でも起こるような症状が多いといえます。病気が進むと、胃部不快感、腹痛、腰背部痛、黄疸などがみられます。現在、膵臓がんの原因ははっきりしていませんが、喫煙・膵嚢胞・糖尿病・慢性膵炎・膵臓がんの家族歴などが危険因子とされています。このような因子を持っている方は早期発見のため、積極的に血液検査や腹部超音波検査などを受けられることをお勧めします。